峠茶屋〜ふれあい源流うどん〜3
2006.05.22 Monday | by 浦谷さおり

じょーさんが店の引き戸を開けると、ぽんぽこりんはいなくてちょっとタヌキ似のおばあちゃん1がストーブでかき餅を焼いていた。なぜおばあちゃん1なのかというと、奥の厨房に無理やりカテゴリ化するとキツネ似のおばあちゃん2もいたからである。
※イラスト:かき餅を焼くおばあちゃん。箸でゆっくりゆっくり返していくのでとっても時間がかかる。
おばあちゃん1「ああ、あんたらえらい早いなぁ。お客さんかいな?」
はい、客です。ということは店なんですね、よかったよかった。
おばあちゃん2「まだ準備できとらんでー。さっき湯が沸いたばっかりやから、ちょっと待ってな」
はい、なんぼでも待ちます。朝イチで腹ぺこです。
おばあちゃん1「まぁその辺に座り。これでも食べとり」
お茶とかき餅が出てきた。ほんのり甘くて素朴で、小さい頃に食べた味と一緒だ。なつかしー。
おばあちゃん1「正月にいっぱい作ったんや。この時期だけやで、かき餅出すんは」
大人5人でおとなしく座ってかき餅をポリポリ食べていたら、そのうちうどんが出てきた。注文した5人分のうどんと、半玉分くらいの麺が入ったもう1杯のどんぶり。
う「これなんですか?」
おばあちゃん2「ゆでたらちょっと余ったんや。食べ」

ねじれ気味の黄色がかった麺。私の釜あげには、きしめんの5倍くらいの太さの麺が1本混入していた。手打ちで手切りでござる! といった感じだ。
無言で一気にすすりあげる。ふむ〜、もうなんといっていいか、めちゃくちゃおばあちゃんのうどんだ!
うどんは打つ人の手でずいぶん変わるが、「おばあちゃんのうどん」というのは特別である。打ち方がうまいとか、配合がいいとか粉がいいとか、そういうことと無関係に「おばあちゃんのうどん」はおばあちゃんの味がするのだ。年をとっておばあちゃんになると手から何か特殊な調味料が出るとしか思えない。
おばあちゃん2「うちは昔なぁ、旅館やっとったんや。もう閉めて長いこと放ってたんやけどな。そしたら防犯の人が、この建物がもったいないからうどん屋やらへんかーゆうて」
う「防犯の人が、うどん屋をやれと??」
おばあちゃん2「そうや。店が営業してた方が防犯につながるんやて。ほんでその人がうどんの先生やったから、打ち方習ったんや」
う「防犯の人がうどんの先生! そうですか、そりゃまた・・・。え、それでこちらのおばあちゃんは?」
おばあちゃん2「うどん屋始めよかいなー思って、ひとりやったらあれやさかい連れを誘ってな。私ら二人ともここで生まれてここで育ったんや」
ちなみにここの「湯だめ」はお湯につかっていない。1回ゆでたうどんをお湯で洗ったもの、なのだそうだ。お湯で洗うのはたいそう熱くて大変なはずだが、ここで生まれてここで育ったのだから、ここの湯だめはこれでよいのである。
ほんでもって、壁に貼られたお品書きには「湯ざめ」と書いてある。さめたらあかんがな! 風邪ひくがな! とかツッコミながら
「湯ざめうどんひとつ〜」
と注文しても、残念ながらちゃんと「湯だめ」が出てくるのでこれはこれでよいのである。
インターネットで情報が流れて突然お客さんがどっさり押しかけたりすることもあるらしい。あんまりいっぱい行っておばあちゃんが倒れると困るので、空いてそうなときを狙って行ってください。土日祝しか営業してないけど。








